監修:
東海大学医学部付属病院 皮膚科教授 馬渕 智生 先生
東海大学医学部付属病院 皮膚科准教授 山﨑 文和 先生

自己負担限度額を超えた金額が払い戻される高額療養費制度や、一部の健康保険組合や共済組合が独自に設定している付加給付制度がありますので、うまく活用して治療ゴール(症状が改善したらやってみたいこと)を目指しましょう。ご不明な点は、主治医に相談しましょう。

医療費負担が軽減される制度

公的な医療保険制度(国民健康保険[国保]、社会保険(健康保険)[社保]、後期高齢者医療制度など、本サイトでは健康保険等と表記します)に加入している場合、診察や治療に必要な医療費については、1〜3割を自己負担額として支払います。

3割負担
  • 6歳(義務教育就学後)
    〜70歳未満
  • 70歳以上の現役並み所得者※1
2割負担
  • 0歳〜6歳
    (義務教育就学前※2
  • 70歳〜75歳未満
    (現役並み所得者を除く)
  • 75歳以上の一定以上所得者※3
1割負担
75歳以上
(2割、3割負担以外の方)
3割負担 2割負担 1割負担
  • 6歳(義務教育就学後)
    〜70歳未満
  • 70歳以上の現役並み所得者※1
  • 0歳〜6歳
    (義務教育就学前※2
  • 70歳〜75歳未満
    (現役並み所得者を除く)
  • 75歳以上の一定以上所得者※3
75歳以上
(2割、3割負担以外の方)
  • ※1 現役並み所得者:標準報酬月額28万円以上
  • ※2 義務教育就学前:6歳に達する日以降、最初の3月31日まで
  • ※3 「住民税課税所得が28万円以上」かつ「「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯の場合200万円以上、複数世帯の場合合計320万円以上」の方

ただし、自己負担額が高額な場合、次のような医療費助成を利用することで自己負担額を軽減させることができます。

医療費負担が軽減される制度

  • 高額療養費制度
  • 付加給付制度
  • 高額医療・高額介護合算療養費制度
  • 高額療養費貸付制度・受領委任払制度

税負担が軽減される制度

医療費控除制度
  • 本サイトの内容は2022年10月時点の情報に基づき作成しています。
    法令改正等により、自己負担額等が変更される場合があります。
  • ご加入の健康保険(保険者)やご利用の医療費助成制度等によって、高額療養費制度におけるご利用条件や支給金額が異なりますので、詳しくは市区町村役場やご加入の健康保険(保険者)にお問い合わせください。

高額療養費制度の仕組み

1ヵ月(1日から末日)に支払った自己負担額が高額な場合、ご加入の健康保険(保険者)に申請することにより、一定額(自己負担限度額)を超えた金額が払い戻されます。

自己負担限度額は、年齢や所得区分等に応じて決まり、事前に限度額適用認定証などの認定証を取得※1し、医療機関等の窓口に提示すると、以降のお支払いが限度額までとなります。
また、すでにお支払いの高額医療費について高額療養費の支給申請を行うことで、自己負担限度額を超えた分の払い戻しを受けることもできます。

また、複数の医療機関等※2を受診し、窓口支払いの合算額が限度額を超える場合についても、後日、ご加入の健康保険(保険者)に高額療養費の支給申請を行うことで払い戻しができます。
直近の12ヵ月間に高額療養費の払い戻しが3月を超える場合に適用される多数回該当や同一健康保険にご加入の家族間での世帯合算の対象となる場合も支給申請が必要です※3

  • ※1 限度額適用認定証の取得には申請が必要です。対象となる年齢や所得区分については、市区町村、ご加入の健康保険にお問い合わせください。
  • ※2 外来・入院、医科・歯科、調剤薬局ごとに分かれた窓口支払いも合算の対象となります。
  • ※3 先進医療などの保険外診療、食事代、差額ベッド代などは対象外です。

限度額適用認定証

「限度額適用認定証」、または「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付をあらかじめ受け、医療機関等の窓口で提示すると、お支払いを各医療保険における負担上限額までにとどめることができます。また、年齢や所得区分により必要な認定証が異なりますので、交付申請手続きの際は以下の表をご参照ください。

限度額適用認定証の交付申請の要・不要を年齢・所得区分別に示した表。
70歳未満の場合は所得区分に関係なく事前に限度額適用認定証の交付申請が必要(※4)。
70歳以上で所得区分が現役並み所得者(年収約370万円以上)または一般(年収156万円〜約370万円)の場合は交付申請は不要。
70際以上で所得区分が低所得者(住民税非課税者)は事前に限度額適用・標準負担額減額認定証の交付申請が必要
※4 住民税が非課税の方は、限度額適用・標準負担額減額認定証を申請します。

限度額適用認定証により、窓口支払いが自己負担限度額までに軽減された場合であっても、複数の医療機関等の受診により合算額が自己負担限度額を超えることがあります。
その場合は、後日、合算した負担額について高額療養費の支給申請を行うことで払い戻しを受けることができます。

自己負担限度額

1ヵ月(1日から末日)の自己負担限度額は、年齢や所得区分、ご加入の健康保険の種類により異なります。
詳細については、ご加入の健康保険(保険者)にお問い合わせいただくか、限度額適用認定証をご確認ください。

70歳未満の方の自己負担限度額を示した表。
所得区分ア(年収約1,160万円以上、健保加入の場合は標準報酬月額83万円以上、国保加入の場合は保険料算定の所得額(※5)901万円以上)の場合、自己負担限度額(世帯ごと)は252,600円+(総医療費−842,000円)×1%。
所得区分イ(年収約770万円〜約1,160万円、健保加入の場合は標準報酬月額53万円〜79万円、国保加入の場合は保険料算定の所得額(※5)600万円〜901万円以下)の場合、自己負担限度額(世帯ごと)は167,400円+(総医療費−558,000円)×1%。
所得区分ウ(年収約370万円〜約770万円、健保加入の場合は標準報酬月額28万円〜50万円、国保加入の場合は保険料算定の所得額(※5)210万円〜600万円以下)の場合、自己負担限度額(世帯ごと)は80,100円+(総医療費−267,000円)×1%。
所得区分エ(年収約370万円以下、健保加入の場合は標準報酬月額26万円以下、国保加入の場合は保険料算定の所得額(※5)210万円以下)の場合、自己負担限度額(世帯ごと)は57,600円。
所得区分オ(住民税非課税者)の場合、自己負担限度額(世帯ごと)は35,400円。
70歳以上の方の自己負担限度額を示した表。
所得区分が現役並み所得者(年収約1,160万円以上、健保加入の場合は標準報酬月額83万円以上、国保加入の場合は課税所得(※5)690万円以上)の場合、自己負担限度額は252,600円+(総医療費−842,000円)×1%。
所得区分が現役並み所得者(年収約770万円〜約1,160万円、健保加入の場合は標準報酬月額53万円以上、国保加入の場合は課税所得(※5)380万円以上)の場合、自己負担限度額は167,400円+(総医療費−558,000円)×1%。
所得区分が現役並み所得者(年収約370万円〜約770万円、健保加入の場合は標準報酬月額28万円以上、国保加入の場合は課税所得(※5)145万円以上)の場合、自己負担限度額は80,100円+(総医療費−267,000円)×1%。
所得区分が一般(年収156万円〜約370万円、健保加入の場合は標準報酬月額26万円以下、国保加入の場合は課税所得(※5)145万円未満)の場合、外来(個人ごと)の自己負担限度額は18,000円(年144,000円)、世帯ごとの自己負担限度額は57,600円
所得区分が低所得者(住民税非課税者)の場合、外来(個人ごと)の自己負担限度額は8,000円、世帯ごとの自己負担限度額は24,600円(年金収入80万円以下などの場合は15,000円)
※5 対象となる所得については、市区町村にお問い合わせください。
厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf (2023年6月アクセス)

多数回該当

直近の12ヵ月間※6に、同じ健康保険にご加入の家族間(同一世帯)で、高額療養費の払い戻しが3月以上ある場合、4月目からの自己負担限度額はさらに下がります。
多数回該当の自己負担限度額を確認される際は、所得区分をご参照いただき、申請についてはご加入の健康保険(保険者)にお問い合わせください。

※6 直近の12ヵ月間というのは、治療を受けて高額療養費に初めて該当したのが前年6月の場合、翌年5月までの12ヵ月を指します。

多数回該当の自己負担限度額

多数回該当となるケースの模式図。2021年6月に初回の高額療養費の支払いが発生した場合、2022年5月までの直近の12ヵ月間で4回目以降の高額療養費の支払いに対しては自己負限度額が更に下がり、払い戻される金額が増額される。
多数回該当の場合の自己負担限度額の表。
70歳未満の方で所得区分ア(年収約1,160万円以上)の場合、本来の負担の上限額は252,600円+(総医療費−842,000円)×1%だが、多数回該当の場合の自己負担限度額は140,100円となる。
70歳未満の方で所得区分イ(年収約770万円〜約1,160万円)の場合、本来の負担の上限額は167,400円+(総医療費−558,000円)×1%だが、多数回該当の場合の自己負担限度額は93,000円となる。
70歳未満の方で所得区分ウ(年収約370万円〜約770万円)の場合、本来の負担の上限額は80,100円+(総医療費−267,000円)×1%だが、多数回該当の場合の自己負担限度額は44,400円となる。
70歳未満の方で所得区分エ(年収約370万円以下)の場合、本来の負担の上限額は57,600円だが、多数回該当の場合の自己負担限度額は44,400円となる。
70歳未満の方で所得区分オ(住民税非課税者)の場合、本来の負担の上限額は35,400円だが、多数回該当の場合の自己負担限度額は24,600円となる。
70際以上の方で所得区分が現役並み所得者(年収約1,160万円以上)の場合、本来の負担の上限額は252,600円+(総医療費−842,000円)×1%だが、多数回該当の場合の自己負担限度額は140,100円となる。
70際以上の方で所得区分が現役並み所得者(年収約770万円〜約1,160万円)の場合、本来の負担の上限額は167,400円+(総医療費−558,000円)×1%だが、多数回該当の場合の自己負担限度額は93,000円となる。
70際以上の方で所得区分が現役並み所得者(年収約370万円〜約770万円)の場合、本来の負担の上限額は80,100円+(総医療費−267,000円)×1%だが、多数回該当の場合の自己負担限度額は44,400円となる。
70際以上の方で所得区分が一般(年収156万円〜約370万円)の場合、本来の負担の上限額は57,600円だが、多数回該当の場合の自己負担限度額は44,400円となる。

(注)70歳以上の住民税非課税者の区分の方については、多数回該当の適用はありません。
厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf(2023年6月アクセス)

世帯合算

70歳未満の方で、同じ健康保険にご加入の家族(同一世帯)において、同じ月に21,000円以上の自己負担額※7が2件以上ある場合、合算した金額が自己負担限度額を超える場合については、高額療養費制度における払い戻しの対象となります。
同じ月に同じ人での合計が21,000円以上の自己負担額※72件以上があった場合も該当します。70歳以上の方は、「21,000円以上」の支払い額の条件はありません。同じ月で世帯すべての自己負担額を合算します。

※7 個人ごと、1ヵ月ごと、医療機関ごと、入院・外来・歯科別で計算します。
Bさん(70歳未満・年収540万円・扶養家族あり・所得区分ウ・健康保険加入)の場合の世帯合算の例図。
夫(被保険者)はA病院の外来で24,000円(自己負担額)の医療費を支払った。
妻(被扶養者)はB病院の外来で30,000円(自己負担額)と入院で60,000円(自己負担額)の医療費を支払った。また、C病院の外来で3,000円(自己負担額)の医療費を支払った。
これらの内、21,000円以上の自己負担が発生した支払いの合計金額が自己負担限度額を超えていれば高額療養費の払い戻しの対象となる。
自己負担額は夫の24,000円、妻の30,000円と60,000円の合計114,000円。
総医療費は自己負担額を負担割合3割で割った380,000円。
総医療費を所得区分ウの計算式にあてはめて自己負担限度額を算出。
80,1000円+(380,000円−267,000円)✕1%で81,230円が自己負担限度額となる。
自己負担額114,000円から自己負担限度額81,230円を引いた32,770円が高額療養費として払い戻される金額となる。
詳細や申請については、ご加入の健康保険(保険者)にお問い合わせください。

その他の医療費助成制度

  • 付加給付制度とは

    一部の健康保険組合や共済組合では、高額療養費制度よりも低い自己負担の上限額を独自に設定しているところもあります。限度額を超えた金額を付加給付として支給されます。各組合が任意で定める制度のため、制度の有無や内容はさまざまです。制度利用の可否や詳細・手続きについては、ご加入の健康保険(保険者)にお問い合わせください。

    高額療養費制度よりも低い自己負担上限額を独自に設定している例図。
加入している健康保険に付加給付制度がある場合、高額療養費制度からの支給に加えて、付加給付制度からの支給を受けられ、実際の負担額が減じることがある。
Bさん(70歳未満・年収540万円・所得区分ウ・健康保険加入)の上限額が30,000円だった場合、1ヵ月(月初め〜月末)に病院に支払った金額が50,000円のとき、健康保険(保険者)から一部負担還元金として被保険者(本人)に20,000円が払い戻される
  • 高額医療・高額介護合算療養費制度とは

    世帯内の同一の健康保険の加入者の方について、毎年8月から1年間に支払った医療費と介護の費用を合算して、基準額を超えたときにその超過金額を支給する制度です。高額療養費制度による月単位の負担軽減があった場合でも、なお重い負担が残る場合に年単位で軽減する制度です。詳しくはご加入の健康保険(保険者)にお問い合わせください。

  • 高額療養費貸付制度・受領委任払制度とは

    限度額適用認定証の入手前で医療費の支払いが困難な場合、高額療養費貸付制度を利用することで、高額療養費の支給見込み額(見込みの8割程度)を無利子で借りることができます。
    また、高額療養費分を健康保険(保険者)が直接病院に支払う高額療養費の受領委任払制度もあります。
    いずれも、健康保険(保険者)により取り扱いが異なる場合がございますので、ご加入の健康保険(保険者)にお問い合わせください。

  • [税負担が軽減される制度]医療費控除制度とは

    確定申告の時期(2月中旬〜3月中旬)に税務署に書類を提出することで、1年間に支払った医療費について、所得の控除を受けることができます。
    また、診療費や薬剤費だけでなく、通院のための交通費なども含めて申請することができます。申請を忘れてしまっても、過去5年以内であれば、さかのぼって申請することができます。
    なお、申請時に病院・医院で受け取った領収書の提出は不要ですが、5年間保管しておかなければなりませんので、必ず領収書を受け取り、保管しておきましょう。

    対象となる医療費

    • 診療費
    • 入院費
    • 通院時の交通費
    • 入院時の食事代(病院で出された食事のみ)
    • 薬剤費(病気の予防や健康増進のための薬剤[サプリメントなど]は除く)
    • 病気の治療のためのマッサージや鍼灸など
    • 医療費器具の購入費

    など

実際の手続きについて

国税庁のウェブサイト(https://www.nta.go.jp/)をご覧になるか、お住まいの地域の税務署にお問い合わせください。

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