監修:
東京医科大学皮膚科学分野 教授大久保 ゆかり先生

目次

掌蹠膿疱症の治療

掌蹠膿疱症の治療では、生活指導、悪化因子の除去や薬物療法などさまざまな治療を組み合わせることで症状をコントロールすることが大切です。近年は、治療選択肢も増えており、患者さんお一人お一人のライフスタイルに合った治療法を選択することができるようになりました。患者さんご自身が納得できる治療について医師と相談してみましょう。

イラスト:医師と患者が会話しているイメージ

掌蹠膿疱症の治療一覧

生活の改善と悪化因子の除去
  • 禁煙
  • 口腔ケア
  • 病巣感染の治療
対症療法 たいしょうりょうほう
  • 外用療法
  • 紫外線(光線)療法
  • 内服療法
  • 生物学的製剤
対症療法:
病気の原因を取り除く治療ではなく、病気により起こっている症状(発疹、かゆみ、痛みなど)を抑えるために行う治療のこと
病巣感染:
扁桃炎、副鼻腔炎、歯周炎など
質問: 掌蹠膿疱症の治療はどのくらい時間がかかるの?
回答:

掌蹠膿疱症の治療期間は平均3~7年とされています1)。なお、治療をせずに自然に症状がおさまったケースは報告されていません。
禁煙や病巣感染(歯周炎、扁桃炎など)の治療により、掌蹠膿疱症の症状をコントロールできると期待されています。また、対症療法により、症状を抑えて生活上の問題を減らすことも大切です。

1) 照井正,他:掌蹠膿疱症,最新皮膚科学大系,中山書店,2002,6,226-231

質問: 毎日の生活で心がけることはある?
回答:

掌蹠膿疱症は、感染症や腸内環境の悪化が病状や治療に悪影響を及ぼすとされています。睡眠不足や過度なストレスにより免疫バランスを崩すこともあります。
健康を保つために必要とされる、バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠という規則正しい生活を送ることを心がけましょう。

生活の改善と悪化因子の除去

禁煙しましょう

喫煙は掌蹠膿疱症を引き起こしたり、悪化させる要因の一つです。
また、喫煙を続けることで、掌蹠膿疱症の治療効果が低下するとされています2)
治療を開始する時点で、禁煙を同時に行うことが重要です。

2) 藤城幹山,他:日皮会誌,125,9,1775-1782(2015)

イラスト:禁煙のイメージ

口腔ケアもしっかりと

進行した虫歯や歯周炎などの病巣感染は、掌蹠膿疱症を引き起こしたり、悪化させる要因の一つです。
そのため、皮膚科医のみならず歯科医とも今後の治療法についてしっかりと話すことが重要です。
歯の治療により、患者の約60%に掌蹠膿疱症の症状の改善がみられた報告もあります3)。日頃から口腔ケアはしっかりと行いましょう。

3) Kouno M, et al.: J Dermatol,.44, 6: 695-698 (2017)

イラスト:歯科治療のイメージ

扁桃炎、副鼻腔炎、歯周炎など(病巣感染)の治療

扁桃炎、副鼻腔炎、歯周炎といった病巣感染が疑われる場合には、その治療を行います。
通常は、そのほとんどが治療の対象にならない無症状ですが、掌蹠膿疱症の発症や慢性化の原因に関連していると考えられており、発症の原因を探ることが重要になります。
病巣感染治療では、皮膚科医、整形外科医、リウマチ科医のみならず、耳鼻科医、歯科医などさまざまな診療科が連携して、病巣感染治療を行うことが大切です。
具体的には扁桃炎、副鼻腔炎は耳鼻咽喉科で、歯周炎は歯科で状態を確認し、それぞれ治療を進めていきます。

扁桃の位置

歯周炎などの歯性病巣の治療を行っても症状が改善しない場合に、口蓋扁桃の摘出手術を行う場合があります。

イラスト:口蓋扁桃(扁桃)の位置のイメージ。鼻腔・口腔・舌・耳管扁桃・咽頭扁桃・口蓋扁桃(扁桃)・舌扁桃の位置関係をを示した図。
出典:山本俊幸編:乾癬・掌蹠膿疱症 病態の理解と治療最前線,中山書店,2020,.386

対症療法

外用療法(塗り薬による治療)

ステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬を使います。あわせて、保湿剤を使うこともあります。
塗り薬は、医師から指定された部位に、やさしくのばして塗ります。ごしごしすりこんだり、鱗屑を無理にはがすと悪化するおそれがあるのでやめましょう。
塗り薬を付けた後や、患部のかき壊し予防に、チューブ型の包帯を使うこともあります。チューブ型の包帯は、手のひら、足の裏に通すだけで簡単に使えます。

イラスト:チューブ型の包帯を装着した手のイメージ
質問: 市販のハンドクリームを使ってもいい?
回答:

市販のハンドクリームには、さまざまな成分が含まれているため、掌蹠膿疱症の症状に影響する可能性があります。まずは医師にご相談ください。

紫外線(光線)療法

皮膚症状に対して行われる治療法です。週に1度程度の通院が複数回必要です。
照射する紫外線の波長の違い(UVA、UVB)で治療方法が異なります。
紫外線を照射する前に、塗り薬や飲み薬を使用する治療方法もあります。

紫外線療法の一例(PUVA療法)

イラスト:紫外線療法の一例(PUVA療法)のイメージ
質問: 自分で日焼けをすれば治るの?
回答:

単に日焼けをしたからといって、掌蹠膿疱症がよくなることはありません。
むしろ、日焼けサロンなどで過度の日焼けをすることは、光による老化促進だけでなく発がん作用も懸念されます。わからないことがあれば医師にご相談ください。

内服療法(飲み薬による治療)

外用療法や紫外線療法で効果が認められない場合、内服療法が行われることがあります。
関節炎による痛みに対しては、他の治療と合わせて痛み止めが用いられることがあります。

イラスト:飲み薬(カプセル・錠剤・粉末)のイメージ

生物学的製剤せいぶつがくてきせいざい

掌蹠膿疱症の治療選択肢の一つとして、生物学的製剤と呼ばれるおくすりを数週間おきに注射する治療があります。
生物学的製剤とは、生物から作られる物質(たんぱく質など)を応用して作られた薬剤です。
掌蹠膿疱症の治療に使う生物学的製剤は、炎症の原因であるサイトカイン(IL-17やIL-23)にはたらきかけることで、炎症を抑えます。
日本皮膚科学会が認めた医療機関でのみ治療を行うことができます。

サイトカイン(イメージ図)

イラスト:医師が患者に注射をするイメージ